ドイツの冬は基本的に天気が悪く暗い時間が長く寒い、というのが通常です。数日前から1週間程ですがドイツを訪れています。ドイツに着いてから今日までの約3日間は珍しくとても良いお天気続きでした。

まるで岡山の晴れをそのまま持っていったような晴天でした。綺麗な空の色と明るい日差し、日の出ている間は外を散歩しました。昨日あたりまで雨が降っていたのだろうという芝生や土の湿り具合が伺えました。ドイツの長く暗い、お天気の悪い日常にこうして晴れた日がやって来ると多くの人たちが外に出で散歩を楽しみます。私も例外ではありませんでした。今回滞在した温泉のある街にある庭園はとても広い敷地内に池や古い建物がありそんな懐かしい風景の中を歩きながら晴れの天気を楽しみました。

そして次の街に移動するために電車に乗っていたのですが午後になるとどんどん天気は下り坂になり、それと同時に16時半を過ぎたあたりからもうあたりも暗くなり始めました。そんなどんよりとした田園風景を眺めながら私は不思議な気持ちになりました。いつも冬になるとこの天気にうんざりしていたのですが、久しぶりに電車に乗って車窓を流れる景色として眺めていると「ああ、これだな、ドイツのどんより冬の田園風景、ふふふ」とどこか懐かしい思いを持ったのでした。不思議ですね。私は風景の写真を撮るのが好きで特に森の景色や街、田園風景が美しいドイツ北西の私が住んでいた小さな綺麗な街の写真は本当にたくさんあります。そして気が滅入るような曇りの田園風景はおそらく数枚も入っていないでしょう、そんな景色を見て「あ〜美しいな、撮っておこう」とは思いませんものね。けれど、久しぶりにこの見慣れたどんより田園風景を見て「ふふ、これだよね、懐かしい景色」と思い、同時に「シューマンやブラームス、シューベルトにベートーヴェンも冬はきっとこういう風景を日常として眺めていたよね、そしてそこから想像を膨らませて作った曲たちもきっとあるよね」と思いを馳せました。この「暗くて鬱々とするような天気、寒くて長い冬」があるからこそ生まれた名曲たちもきっとあるのだろうな、これが冬の間ほとんどスペインの地中海側のカラッと晴れたような気候だと決して生まれなかった、この気が滅入るような天気だけれど、だからこそ生まれた曲たちも多くあるのだろうな。そう思うと目の前の車窓を流れる「どんよりとした冬の田園風景」も何だか感慨深く眺めてしまうのでした。
シューベルトの「冬の旅」を聴きたくなる、そんな時間でした。
今日はこの辺で。今夜もありがとうございます。(2020年1月18日)