基礎練習。本当にいろいろな種類のものがあります。ロングトーン、音階、スタッカート、アルペジオ、スラー、ビブラート.....毎回、全種類をこなしていたら平気で数時間経ちそうですね。皆さんはどんな基礎練習をしていますか?
私は、自分の苦手とする分野に絞ってそれに合うものを見つけました。といってもまだまだ発展途中で完璧ではありませんが、自分にとっては課題としていた分野が大きく前進したきっかけになったエチュードがあります。それを今日は皆さんにご紹介したいと思います。
まず、私の苦手とする分野ですが、ズバリ「指」です。こんな事を書いたら恥ずかしいですが事実なので仕方ありません。私にとって指のテクニックは他の項目に比べて苦手とする分野です。パスクリ、ジョリべ、凄い速さのものは苦手です。そのかわり「歌うこと」「音色」「音程」などは昔から得意でした。とは言ってもいつまでも「テクニック」に苦手意識を持ち続けていては話になりません。そんな時に見つけたのが...このエチュードです。

皆さんもご存知の、作曲家Paul Taffanel (タファネル)の作った教則本です。タファネルは当時有名なフルート奏者でもありまして、フルートのための教則本を書いています。そんなタファネルが書いたエチュードの中に「音階」のページがあります。仲間のフルート奏者がいつもこのエチュードをさらっているのを見ていて自分もやってみようと思ったのがきっかけです。この本の中身全てを写真でご紹介するわけにはいかないので、最初の部分だけ写したしたものをご紹介しましょう。

この「音階エチュード」の特徴は「全ての調、長調・短調を網羅していること」です。ハ長調から始まり平行調に移りながら♭や♯を増やしていき、再びハ長調に戻るという流れです。短調の場合は「上りは旋律的短音階で下りは和声的短音階」となります。順番は次のようになります。長いです?そしてドイツ語表記(Dur、moll)の方がわかりやすいかもしれません。
ハ長調 →(平行調の)イ短調 →♭が一つ増えてへ長調 →(平行調の)二短調 →♭が二つになって変ロ長調
→(平行調の)ト短調 →♭が三つになって変ホ長調 →(平行調の)ハ短調 →♭が四つになって変イ長調
→(平行調の)へ短調 →♭が五つになって変二長調 →(平行調の)変ロ短調 →♭が六つになって変ト長調
→(平行調の)変ホ短調 →♯が五つのロ長調 →(平行調の)嬰ト短調 →♯が四つのホ長調 →(平行調の)嬰ハ短調
→♯三つのイ長調 →(平行調の)嬰へ短調 →♯二つの二長調 →(平行調の)ロ短調 →♯一つのト長調
→(平行調の)ホ短調 →ハ長調
と再びハ長調に戻るわけです。ちなみに教則本には色々なアーティキュレーションが書いていますが、私はスラーでやっています。これは指の動きに集中して滑らかな動作にしたいからです。テンポはゆっくりで構いません、むしろゆっくりから始めるのが良いでしょう。日々繰り返していると、だんだん暗譜で吹けるようになります。全ての調を吹き終わると20〜25分ぐらいかかると思います。吹きやすい調を速く、難しい調はゆっくりというバラバラなテンポでは良くないので、初めは♩=40など本当にゆっくりする事、そのテンポを保ち続ける、慣れてきたら少しずつ速くすれば良いと思いますが、この音階は高速で吹くことが必ずしも1番の目的ではありません。
ここからがこのエチュードの凄いところです。
楽譜をずっと見ながらこのエチュードをさらっているうちは自覚できませんが、覚えてくると「譜面上にある音符に反応するのではなく、次はこの音の幅だ」と思いながら吹けるようになります。長調は一種類ですが、短調は上りが旋律的短音階と下りが和声的短音階となります。長調の音価(音と音の幅)、短調の音価、上りと下りでどのような音価なのかを覚えることで、「どの音で始めてもその調性にとって相応しい音の並びで吹ける」ようになります。楽譜を「ただの音」として認識するのではなく「意味のある音の連なり(音階)」として感じられるようになります。
例えば「変ト長調」の場合は「Ges- As- B- Ces- Des.....」ではなくて「Ges から始まる♫ドレミファソラシドレドシラソファミレ」という長調の音階を思い浮かべるわけです。これは管楽器奏者、いえ、演奏家にとってとても大事な要素です。どの音で始めても長調の音価と明るい感じ、短調の音価と暗い感じをイメージでき演奏できる。ハ長調や二短調などは普段から慣れているので簡単ですが、♭や♯が5個以上となると話は別です。けれど、今お話しした方法で慣れていくと今まで以上に「普段使うことが多い調性の音階が今までよりも美しく演奏できる→ 音階だけに限らず音の連なりを意味のある繋がりで考えられる→ 歌っているように演奏できる」事につながります。
このエチュードを練習する時にいくつか気を付けると良いポイントがあります。
★指の動きをなめらかに ★息の流れをずっと意識する ★美しいスラーをイメージ
どうせ音階練習するなら一度に幾つかの大切な要素も意識しましょうということですね。
長くなりましたが、もし興味を持たれたら私が写した見にくい画像ではなくて、この楽譜を実際に購入するのがベストだと思います。今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。
音楽に楽しみと喜びを★ Viel Spass und Freude am musizieren!!