オーボエの音色、とてもハッキリとしていて澄んだ光のようで、また哀愁も漂いそれでいて牧歌的な...そんな言葉が浮かんできますね。では、その音が遠くまで届いている、響いているというのはどういう事なのでしょうか。どうしたらそれが出来るのでしょうか。私が聴いた、体験した「飛んでくる音、響きがすごい音」をお話ししたいと思います。
もう何年も前の事になりますが、ドイツ・デトモルト音楽大学で当時声楽科の教授だったトーマス・クヴァストホフ氏の歌うシューベルトの「冬の旅」を聴いたときのことです。
私は大学の音楽ホールの最後列に座っていました。舞台の上からホールの一番後ろまでは結構な距離があるのですが、クヴァストホフ氏のpp(ピアニッシモ,とても弱い音量)がまるで自分の耳もとでささやかれているかのようにすぐそばに聴こえたのです。文字通り鳥肌がたちました。あんなに遠くにいるのにそしてあんな極小の声量がまるでそばで耳をそば立てているヒソヒソ話のように鮮明に聴こえるのです。なんなんだこれは、と衝撃を受けました。
また、尊敬するロシア人のオーボエ奏者の先輩が演奏するミュンヘン室内管弦楽団をケルンにあるフィルハーモニーで聴いた時、あの大きなホールでそのオーボエの先輩が演奏する音が一番遠くまで飛んできていたというのを鮮明に覚えています。周りの管楽器グループの方達の誰よりも遠くに羽ばたいていた音でした。

そして以前の記事にも書いていますが、ドイツでの師匠がレッスンの時に吹いてくださるオーボエの響きはまるでひまわりやキラキラと光り輝く太陽のようで、私はいつも3大テノールのパバロッティみたいだな、どうやったらあんなキラキラした響きが出せるんだろうと思って聴いていました。
このように何度か文字通り鳥肌が立つような響きを聴く事ができて、それを目標にして今度は自分の中の感覚として育てていきたいといつも思いながら取り組んできました。
もちろん上述の“凄い人たち”には遠く及びませんが、自分なりの響きの感覚、どうやったらそれを感じる事ができるのか、何を心がけていっているのか幾つかハッキリとしたものを自分の中に持つ事が出来るようになりました。
それらが何なのか、そして一つ一つの項目について少し詳しくお話ししていこうと思います。
今日はこのへんで。今日もありがとうございます。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2019年12月19日)