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「オーボエ」準備のできたアンブシュアと息。

私たちが普段演奏している時、安定してはっきりと意思のあるアンブシュアがありそれを保てること、そして凝縮してスピードのある息の供給、このことが機能することによって安定して柔軟な演奏につながっていきます。それを目の当たりにしてその大切さを学んだことについてお話ししようと思います。かつて働いていたオーケストラの同僚の話です。

その同僚はオーボエを演奏している時のテンション、これは機嫌や気分のテンションだけに限らず、演奏の熱や息の勢いのとてもある人でした。時々私はその同僚にレッスンを受けていたのですが、彼が私のリードとオーボエを手に取り演奏すると、たちまち「彼の音、響き」になるのでした。まるでリードや楽器がその同僚の体と一体化しているようなかんじでした。私はというと、彼の楽器とリードを吹かせてもらうとなかなかうまく吹けません、癖も響き方もポイントも違うし、、、、、。そんな同僚、また同じクラスでとても尊敬していたロシア人オーボエの先輩、そして大学の師匠、、、みんな同じように人の楽器とリードをすぐに「自分の音や響き」に変えてしまうのでした。どうやったら、そんな「自分の音、響き」が出せるのだろうか。(ここでお話しする中で大事なことは他人の楽器とリードがすぐに吹けるようになることではなく、アンブシュアと息の大切さについてです)

それが分かって今では私も大体の楽器やリードでもわりとすぐに癖やポイントを感じて吹けるようになりました。それが可能であることの前提は「リードが一定の機能条件をクリアしていること」「楽器も普通に良い状態であること」ですが、それをクリアできていれば「私の吹き方で知らない楽器とリードでもわりとすぐに吹きこなせる」ようになりました。では、何が必要になるのか。ようやく今日お話ししたい二つのテーマに来ました。(他人の楽器とリードをうまく吹きこなす事がこのお話しの目的ではありません、あくまでわかりやすい例えとして用いました。)
まずは、安定した、そして確固たる意志を持ったアンブシュアです。それはリードをぐっと噛み締める力ではなく、リードを包み込んでいる部分(アンブシュアの形)と更にその周りでアンブシュアを支えている筋肉の力です。この形とそれを保つ力が安定していて、どんなフォームなんだとはっきりと意識できていれば、ある一定以上の機能条件をクリアしたリードならばすぐに吹きこなせます。そして普通に良い状態の楽器ならばリードと楽器を組み合わせた時に、どんな癖があるのか、どのポイントがきちんと響くポイントなのかわかります。


次に凝縮されてスピードの速い息です。前にもお話ししましたが、イメージは長い水のホースで水まきをしている時にホースの出口を小さくしぼめると出てくる水は細くなりますがスピードが速くなります。これがオーボエを演奏する時に必要な息です。なぜならオーボエのリードの吹き口はとても小さく一度に入る息の量が限られているからです。この凝縮されてスピードの速い息と安定したアンブシュアとが組み合わさってリードと楽器が良い状態で鳴り響くのです。大体の楽器とリードが「自分のアンブシュアと息のスピードに呼応する」ようになります。その結果、ヒョイと他人の楽器とリードを吹いてもわりとすぐにコツを掴んで自分の音と響きにできるのです、そしてそこから、何か不具合がある時「何が機能していないのか」「何で機能していないのか」「何をどうしたら機能するようになるのか」分かるようになります。例え自分の楽器やリードとタイプが違っても、自分の状態(アンブシュアと息)が良い状態で安定していれば分かるようになるのです。それを私は母校の音楽大学でオーボエクラスにリードレッスンをしていきながら学びました。
このように、安定し確固たる意志を持ったアンブシュアと、凝縮されてスピードの速い息はオーボエを演奏する上で最も大事なことと言っても過言ではありません。そして、少し大袈裟な表現になりますが、例えば音出しが十分にできない状態で練習や合わせなどをしなくてはいけない状態だとしても、アンブシュアの確かな感覚と充実した息が準備できていればほぼウォームアップをした状態に近い感覚で始められると言えるでしょう。湿らせたリードを音は出さずにくわえておいてアンブシュアを作っておくのも良いです。
ここで気をつけて欲しい事がいくつかあります。良いアンブシュアと息の状態、感覚をいつも持てるようになるには、普段の基礎練習が欠かせません。基礎練習をサボって良いという意味ではないのではっきりとお断りしておきます。そして、何度もしつこいようですがこのお話しの大事なところは、他人の楽器とリードをすぐ吹けるようになる事が大事なのではなくて、楽器を吹き始める時に「アンブシュアと息の良い状態と感覚を持つこと」がとても大事であるという事です。
なぜこんなにアンブシュアと息のことを何度も書くのか?それは、この二つこそが「心地よい演奏」に必要な最も大事なことだからです。

今日もありがとうございました。
Viel Spass und Freude am musizieren!音楽に楽しみと喜びを★(2019年12月21日)