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【ドイツの暮らし】ドイツのクリスマスマーケット、伝統と経済効果のはざまで

ドイツのクリスマスといえば、クリスマスマーケット。12月に入ってからこのクリスマスマーケット巡りでドイツにいらっしゃる方も多いと聞きます。こんな記事を目にしました。
「経済効果か、価値か、クリスマスマーケットは街を救わなくてはならない」

https://www.zdf.de/nachrichten/heute/weihnachtsmaerkte-als-verkaufsschlager-100.html

この記事についてお話しする前にクリスマスについて少し。今年もクリスマスまであと10日ほどになりました。ドイツのクリスマスは、24日のクリスマスイブと25日のクリスマスだけを祝うのではなく、そのずっと前からもうクリスマスに向けて「クリスマスの前期間」のようなものがあります。これは宗教的理由で、この期間のことをアドベントと言い、
『キリスト教西方教会において、イエス・キリストの降誕を待ち望む期間のことである。日本語では待降節(たいこうせつ)、降臨節(こうりんせつ)、または待誕節(たいたんせつ)という西方教会では、教会の1年は待降節から始まる。11月30日の「聖アンデレの日」に最も近い日曜日からクリスマスイブまでの約4週間で、最も早い年で11月27日、遅い年でも12月3日に始まる。』
と少し難しい説明になりますが、今年はアドベントの期間が12月1日から始まり日曜日ごとに12月1日 第一アドベント12月8日 第二アドベント12月15日 第三アドベント12月22日 第四アドベントと区切りがあって24日がクリスマスイブ、25日がクリスマス第一日目、26日がクリスマス第二日目となります。アドベントが始まるとともに各地でクリスマスマーケットが開かれるのが伝統です。
上の記事に戻りますが、今年はルール工業地帯にある街デュイスブルクでは第一アドベントより17日も早い今月14日にクリスマスマーケットを始めた、という内容です。さらにその周辺の街、エッセンやオーバーハウゼンではそれよりも1日早い開始となりました。なぜこんなに早く始めるのか?理由は「経済効果」を狙ってです。2018年にはドイツ全土で約3000箇所のクリスマスマーケットが開かれ、訪問者は1,6億人(!!!ほんとに??)規模で一人当たりの消費は18ユーロ(2100円ほど)ほどだとか。ケルンのクリスマスマーケットが一番多く、600万人だそうです。そのクリスマスマーケットを長期間やればやるほど儲かる、という理由で、上記の街は早くに開始したのだそうです。逆に、ニュルンベルクのクリスマスマーケットは伝統を重んじていて第一アドベントの1週間当たり前から始めて12月23日か24日に終わることを変えるつもりはないようです。
経済効果か、伝統と価値か。長期開催に異を唱える理由は「そうするとクリスマスという特別な意味と価値が失われるから」とも記事にあります。難しいところですね。私の住んでいた街は毎年豪華絢爛ではありませんが、街の通りを電飾で飾って、控えめですが温かみのあるクリスマスマーケットが開かれていました。教会演奏の仕事の後、仲間とクリスマスマーケットを訪れ、ホットワインを飲んだりするのは、寒くて暗い冬の夜の醍醐味でもありました。

私はクリスマスマーケットを寒い冬の夜の楽しみ、少しずつクリスマスに近づいていって、みんなもなんだか温かく、優しくなっていく、そんな期間という受け止め方をしていたので、あまりに早い開始はなんのマーケットなのかわからなくなるな、とも思います。しかし記事には続くのですが、人々の教会離れ、神を中心にするのではなく、自分の中に中心を見出す、ミサにいくのではなくヨガに行く、となかなかに皮肉を込めた表現ではありますが、確かに人々が教会から離れていき、教会の重要性をあまり感じなくなってきていることは感じます。ドイツで外国人、移民として生きていた私にとってはとても残念でもったいないなあ、教会音楽に多く触れてきた私は、バッハのカンタータ、クリスマスオラトリオ、イースターで演奏する受難曲、これらの素晴らしい音楽、文化、伝統が人々の意識の中から少しずつ減っていくのかもしれない、と思うととても寂しく思いました。今はまだ教会音楽は盛んでクリスマス前などあちらこちらでクリスマスオラトリオが演奏されますし、復活祭の時なども同じです。私は宗教のことは全く詳しくありませんが、この素晴らしい教会音楽という尊い財産はいつまでも守り続けて人々の中に生き続けていってほしいと思います。
日本では(私は今年初めて自分の目で見たのですが)あちこちできらびやかなイルミネーションが施されていますね。先日訪れた九州では、博多駅前のクリスマスマーケットは本当にキラキラしていてヨーロッパ風の屋台もたくさん出ていて驚きました。たくさんの人たちが集まって音楽をきいて屋台を眺めて飲み物を飲んで、、、。そんな人と人が触れ合う場として駅前のイルミネーションそしてクリスマス市場はとても良い存在だな、そして心がほっと温まるなと感じました。

今日もありがとうございました。(2019年12月14日)