今まで何度もテーマに取り上げてきた「アンブシュア」について、今日はもう少し詳しく「なぜこのアンブシュアがそんなに大切なのか、保つってどういうことなのか」お話ししようと思います。
まず、アンブシュアは私が考える「オーボエを演奏する上で大事な3つの支えのひとつ」であるといえます。足裏感覚がなくなると文字通り「地に足がつかない」感じになってしまいます。不安定ですね。お腹の下(丹田)でどっしり支えている感覚を失うと途端に支えが上がってしまい、苦しい演奏になってしまいます。重要な支えの部分が失われると、その周りの機能が失われていくのです。ではアンブシュアが不安定だとどうなるか。音程や響きをコントロールすることが難しくなるでしょう。さらに余計な力でリードを噛んでしまいます。肩、胸、腕にも余計な力が入ってしまい、結局苦しい演奏になってしまいかねません。
これは、私自身の経験からもはっきり言えることなのですが、私自身、緊張してしまうとアンブシュアを支える力、アンブシュアの感覚が失われていく経験をしたことがあります。不安で仕方ない、コントロールも効かなくなる。そんな時、支えどころ、踏ん張りどころとしてのポイントとして、しっかりしたアンブシュアの「フォーム、感覚」を持っていると演奏が大きく崩れることが少ないということがわかりました。ですので、アンブシュアを「大事な支えのひとつ」として考えているのです。
では、アンブシュアを保つってどういうことなのでしょうか。唇そのものはとても繊細でムキムキの筋肉があるわけではありません。かといってアンブシュアを支える唇の周りの筋肉も無限大に鍛えられるわけではありませんよね。保つというのはどんな感じなのか。それは「リードを包み込むフォーム、そういった感覚がきちんとある」ことだと思います。そして、私がしばしば書いている「オーボエを吹く前に、少しだけリードのみで音を出してみる」ことの意味は、筋力をつけるというのが全てではなく、ウォームアップをして感覚を確認するという意味もあるのです。陸上選手がウォームアップもしないでいきなり100mをベストのタイムで走り抜くことはできません。マラソン選手がこれから始まる長い戦いを目の前にしてストレッチも何もしないでスタートするはずがありません。オペラ歌手は舞台に上がる数時間前からゆっくりと発声を初めて調子を整えていくのと全く同じです。バレエのダンサーがゆっくりとストレッチを初めて徐々に調子とテンションをあげていき、いよいよ舞台に飛び出す時と同じです。
どれぐらいの力加減でリードに息を吹き込んでいるか、息はスピードと圧力のあるものか、「H」の音を基準にしてそこから「Cis」、できれば「Dis」までリードで音を出してみよう。(このリードのみの音出しに関しては上記の記事にありますが、人によってアンブシュアの形も力も違いますので「Dis」まで無理をして出す必要はありません。だいたい「H」の音を基準としてそこから一音程度上がった「Cis」との行き来が意識してできれば十分です)そうすることによって中音域の時リードに吹き込む息の感じとアンブシュアがどうなっているか(リードのみの音では「H」)、高音域と低音域のPPの時はリードに吹きこむ息の感じとアンブシュアがどうなっているか(リードのみの音では「Cis」)確認することができます。これがオーボエを吹くにあたっての、私が最初にするウォーミングアップであります。
アンブシュアを保つというのは、すなわち、どんな感覚かをしっかりと持っていることなのですね。
参考にしていただければ幸いです。今日はこの辺で。最後まで読んでくださいってありがとうございます。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★
(2020年11月1日)