デトモルト音楽大学でのリードレッスンを通して私は「基本的な機能はおさえて、楽器やその人ごとに合ったアイテムを見つけていく」というやり方を実践してきました。このリードレッスンをしていた約6年間は本当に貴重な時間でした。今のリード製作販売に全てが反映されていると言っても過言ではないからです。そして私がこのリードレッスンを通して身につけていったことはリードについてのことだけではありませんでした。どういうことでしょうか。

母校であるデトモルト音楽大学で教鞭を取り始めた頃、オーボエクラスは定期的に「クラス内試演会」を行っていました。大学のホールであったり、小ホールであったり。その頻度は約2週間ごとに1度といった感じでした。今取り組んでいる曲を演奏したりオーケストラスタディ(オーケストラのオーディションで使われる曲を集めた楽譜)を演奏したり様々です。そして特筆すべきは「教授と講師である私がひとりひとりに対する詳しいフィードバックを全員がいる場で行い、さらに学生の方からもどんどん意見を聞き出して議論を交わすこと」でこういった取り組みを何度も何度も行ってきました。

目の前の人が演奏する様子をとにかく観察する。良いところと改善すべきところ、それに対しての自分の意見、、、。こういった「観察」と「分析」さらにそれに対する「対処法」「可能性」これらの観点でとにかく「見て」「聴いて」「感じていき」「言葉にする」ことを繰り返していきました。その結果、大事なことを身につけることができました。これはその後の私のリード製作販売にも大きく影響していくことになります。なんでしょうか。

その人の演奏を聴くと、良いところはそのままで(既に出来ていることは放っておいても伸びるので)、何か不具合が出てきた時に「今、どんな不具合が起きているのか」「その不具合は何がどうなったから起きたのか」「ではその不具合を改善するには、何をどうすれば良いか」「そしてその結果何がどう変化するのか」ということが割とすぐに見えるようになったのです。リードに関すること、奏法に関することさまざまです。目の前の人が自由に気持ちよく演奏していると、聴いているこちらも気持ちよくなります。反対に何か吹きにくそうにしているとどうにも聴いているこちらも調子が悪くなってくるのです。その人が不快に(上手く機能しない部分、リードであったり体であったり)感じる部分を私自身も不快に感じるようになりました。

そしてここからがとても大事になるのですが「目の前で起きていることを自分の経験と重ねたり比較したりして色々な引き出しから解決策や可能性を提示できるようになった」のですが、これは最初から完璧に演奏できていたら難しいかもしれません。私自身が色々と悪戦苦闘してああでもないこうでもないと試行錯誤してきたからこそ「その人の身になって感じて考えることができる」のです。
そして、今に繋がっていることはまだまだあります、、、。このお話はもう少し続くので次回にお話しましょう。今のリード製作販売にも大きく繋がっていくことです。次回もどうぞお楽しみに。