先日のブログ「水泳とシューマン、そして呼吸のこと」でも少し触れましたが、オーボエを演奏するうえでもっとも大事なことは、呼吸をどうコントロールするか、ということであるといっても過言ではありません。オーボエのリードは吹き口がとても小さいので一度に多くの空気は必要ありませんし、一度に多くの息は入りません。そしてその狭い吹き口に向かって息を吹き込んで演奏していると、どんどん汚い空気がたまってきてしまうので、その空気をいかに効率よく吐ききって新しい空気を吸うか、というテクニックが必要になります。バロックの曲なども、曲によってはほぼ休みがないものもありますので、この呼吸のテクニックがとても大切になってきます。
さて、ドイツにいた頃、あるオーボエの生徒さんとのレッスンのお話です。その生徒さんはスポーツ万能でとてもアクティブな人です。ある日のレッスンで、バロックの曲を通して演奏する(練習する)時に、どの場所で呼吸をするか、どこで息を吐いて、どこで吸うかということについて一緒に考えて練習をするという内容でした。それまで「息を吐くことを優先する」ということをしてこなかった生徒さんは、そのやり方を知ってずいぶんと演奏するのが楽になった様子で、効果的なレッスンでした。
レッスンが終わって、呼吸つながりでふと思い出した私は、生徒さんにこう聞きました。「一ヶ月前から体力作りのためにジョギングをしているんだけど、身体的には大丈夫なのに、とにかくすぐに息が苦しくなって長く続けて走れないんだ、息が上がって仕方ない」
すると生徒さんはおどろいた様子で答えました。
「Masako、私たちはたった今、呼吸のことについてとても意味のあるレッスンをして、私は今日のレッスンで、オーボエでバロックの曲を演奏するときの大きなヒントをあなたからもらったのよ。そんなあなたの口から、息が上がって苦しくて困るっていう言葉を聞くなんて!」
たしかにその通りですね。我ながら笑ってしまいました。
生徒さんは続けて「ジョギングの呼吸はとにかくテンポが大切、2つ吐いて1つ吸うでも良いし、2つ吐いて2つ吸うでも良いのよ、とにかく遠くの景色を見すえてリズムをたもつ」
私は「うーん、そのつもりでやってるんだけどね、なんでかわからないけれど、すぐに息が苦しくなって休憩(歩くこと)を挟まないとダメなのよ」
「うーん。なんでかしらね、そんなに難しいことではないと思うけれど。たった今、あなたに呼吸のテクニックを教わったばかりなのにね!」
本当に自分でもわかりません。呼吸とひとことにいっても、普段の生活で自然にする呼吸法、楽器を演奏するときの呼吸、ジョギングをするときの呼吸、それぞれに違ったものなのでしょう。私はまだジョギング用の呼吸のテクニックができていないということなのでしょう。
皆さんはジョギングの時、すぐに息が苦しくなったりしませんか?