(前回の記事の続きです)力が上手く抜けた(ように見える)演奏(パフォーマンス)ができるということは、まず必要な所に力を込めることができて、それ以外の所は上手く脱力できている。それが適応されるのがアンブシュアの形を維持する力(筋力)というお話しでした。その力が上手く使えると力みのない柔軟な演奏につながっていきます。ではそのアンブシュアを保つために有効な方法を二つ挙げて詳しく説明していきましょう。

★①ピープセンでの適度な音程が出せること、そしてその音を長く吹き続けることができる
★②ピープセンで適度な音量が出せること(蚊の鳴くような音では蚊の鳴くような音しか出ない)。→リードから出る音がオーボエから出る音に直結する

①これまで何度もお話ししてきたピープセン(リードのみのピーピー音)ですが、それだけ安定した自由なオーボエの演奏には欠かせない技術の一つというわけです。このピープセンを適度な音程でさらにその音をまっすぐ長く吹き続けることができるということは、その時点で「必要な箇所の筋肉を上手く使えている」ことになります。ここで気をつけることは「イーー!」と口を横方向に引いて噛みすぎないことです。唇の筋肉は繊細で弱いので噛みつきすぎると痛くて維持できないばかりか音が潰れてしまいます。唇でリードを巻き込み、その形を唇の周りの筋肉で支えます。リードに接面している唇はどちらかというと硬直させず柔軟に、そしてリードをくわえている(リードに接している接している)アンブシュアの形を保つのに必要な筋肉、唇の周りの筋肉はしっかりと維持できるようにトレーニングする必要があるのです。

ピープセンのやり方についてはこちらで詳しく解説していますので参考になさってください。(全編をご覧になることをお勧めしますが47分あたりからは復習編になっていますので時短で確認もできます)
②ピープセンの音量です。これは最近、多くの方のレッスンで気づいたことなのですが、ピープセンをする時「適度な音量」が出せることはとても重要です。吹きこみすぎる必要はありませんが、勢いのあるまっすぐな凝縮した息(音)が適度な音量につながります。蚊の鳴くようなか細いピープセンの音だと弱々しいオーボエの音しか出ません。当たり前だと思って意識することは少ないのですが「ピープセンすなわちリードから出ている音、息がそのまま楽器に反映される」のです。

※補足になりますが、ピープセンを行うことの意味はアンブシュアを保つ力を鍛えることの他に次のような意味があります。オーボエを吹くには、(適切に機能する!)リードと楽器を繋げて正しい息を吹き込み、正しい音程正しい運指正しい構え方などなど、、、なんと多くのことを一度にやろうとしているのでしょうか。リードを使ったピープセンがオーボエから出てくる音に直結するのですから、複雑なことを一度にやろうとせず、一番簡単な単位に分けてトレーニングすることで、楽器にリードを付けた時により一層コントロールされた音を奏でることができます。これがピープセンを行うことの大きな意味です。

少し話がそれましたが、①と②の内容ができたとします。そうするとリードを支えているアンブシュアの形を保つ筋肉、唇の周りの筋肉が嫌が上でも鍛えられていきます。これが「必要な箇所の筋肉を使っている」ということです。局所的に必要な箇所の筋肉を適切に使うことによってそれ以外の周りの筋肉は結果的に脱力できることにつながるのではないでしょうか。

このような関係は、アンブシュアの周りの筋肉(力を込める)と顔の他の筋肉(力を抜く)の関係だけでなく他の箇所にも言えます。
例えば、、、活用すべきは「みぞおち(横隔膜)」の柔軟で弾けるような動きであってお腹周りの「いわゆる腹筋に力を!!」ではないこと。(そもそも腹筋に力を込めすぎると息も止まってしまい良いことはありません)
例えば、、、活用すべきは「足裏感覚(どの部分に力をかけるかはタイプによる)」を持つことであって「膝に力を入れて硬直させることではない」こと。

このように例えを挙げていくと、音楽とスポーツのパフォーマンスは結構似ているところがあると思いませんか。今日は「上手く力が抜けているように見える演奏に必要な要素の一つ、リードをくわえるアンブシュアを保つための具体的な方法について」でした。最後まで読んでくださってありがとうございます。
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