「オーケストラで演奏する曲がきついので、ちゃんと吹き通すために軽めで楽なリードを選んだのだが、結局は全体の音量に埋もれて自分の音が聴こえていなかったように思う。この先、どういう方向性のリードを目指していけば良いのかわからない」リードレッスンで頂いた質問です。
おそらく多くの人が同じようなことを思ってらっしゃる、どうしたら良いのかわからないと感じてらっしゃると思い、今回はこの「疑問」をテーマとして私の考えをお話ししたいと思います。

生徒さんの質問内容を詳しく見ていきましょう。
①「オーケストラで取り組む曲が結構きつくて最後まで吹き切れる自信がなかった」
②「準備していた(使う予定だった)リードではきついかもしれないと思い、市販の軽くて楽なリードを買った」
③「結果的には発音やp, ppは上手くいったのだが、全体の中で自分の音がほとんど聴こえていなかったように感じた」
④「今後、どういう方向性のリードを目指して作っていけば良いのかわからなくなった」

【どんなリードだった?】少し吹かせてもらったところ、開きはほぼ無く息が入らない、薄っぺらい音でした。
【私の答えを簡潔に】まず、①〜④に関して簡潔に私の答えを書きます。その後、理由を詳しく説明しましょう。
①→演奏そのものがきついリードはもちろん使うべきではないが、少し重いかな、と感じる程度のリードならば吹き慣らしと修正を繰り返して本番用にしていくほうが色々な意味で良い。
②→軽すぎる、楽すぎるリードは結果的には演奏の幅(音量、表現)を狭くしてしまう。
③→軽すぎる、楽すぎるリードというのは開きもすぐに無くなるので音量は出ないだろう。
④→適度な開き、振動が保たれるリードに慣れていったほうがその後の演奏の技術は格段にアップする。

【理由を詳しく】
①オーケストラ曲の中には確かにきつい曲もあります。しかし、全く休符が無いというわけではありませんよね。数小節、時には長めの休みもあります。その休みでアンブシュアの状態を回復したり、息を整えてリフレッシュする時間はあります。本当にきつい曲というのは例えば「バッハのオーボエソナタ」「バッハのパルティータ(オーボエ独奏)」などのバロック時代の曲や、ホリガーが作曲したオーボエのための曲などを指すと思います。オーケストラの中で吹くにあたり、音を出すのが困難なほど重すぎるリードはもちろん選びませんが、だからといって軽すぎて開きのほぼ無いリードを選んでしまうと、あらゆる意味で演奏の幅(キャパシティ)が狭くなります。ましてや「音色」のクオリティを求められがちなオーケストラだと尚更、ある程度の厚みと抵抗感があるリードが必要になってくるでしょう。(※初心者の方や、年齢とともに楽なリードでないと演奏困難という場合もあり、上記の内容は必ずしも全ての人に当てはまるとは限りません。そういった方達のために当アトリエでは楽なリードも提供しています)

②③基本的に厚さがなく薄すぎるリードというのは音質も薄くなり、リードに開きがありすぎると制御しきれなくなるため狭い開きを好むようになります。薄くて開きのほぼ無いリードを選んだ結果、どういった現象が起きるのか。息が入りにくくなり、音量は限りなく小さいか、出にくい状態になります。アンブシュアで包み込もうとすると途端に閉じてしまうのでほぼアンブシュアの力を使わなくなります。そうすると、正確にp, ppをスタートさせることが難しくなります。仮にp, ppが上手く発音できたとしても、そもそもリードが薄く音質も薄いので「周りに溶け込むようなp, ppの音色」を出すのは非常に難しいでしょう。大きい音を出そうと思ってもリードがぺたんこで息が入らないのでfも出ません。

④ここからは、どのようなリードを目指していけば良いか、私なりの考えをお話しします。
(重すぎる、強すぎるリードはそもそも最初から演奏困難なので除外するとして)適度な振動と開きが保たれるリードであることがまず大事です。そこに奏者の好みや適正で吹奏感の違いが加わります。軽めでも重めでも適度な振動と開きがあり、その機能ができる限り長く保たれることが重要なのです。そうすることにより、音量の幅をつけることができます。ちなみに、p, ppの場合はむしろリードを包み込むアンブシュアの圧力を高めるほうが発音しやすくなります。詳しくは以前に書いてある記事をご覧ください。

【軽めでも重めでも適度な振動と開きが保たれること】がなぜ重要なのか。それは、奏者である私たちが【開の少ないオーボエリードだけれども、そこにできる限り心地よい感覚で息を吹き込み、自由な音楽表現を可能にしていく】ためです。
今回、質問を頂いた生徒さんですが、試しに私がほぼ完成させていた「KMタイプ(普通〜少し重め)」のリードを吹いてもらいました。生徒さんは少し重いな、と感じながらも普通に音を出すことができました。ある一定期間、ピープセンのトレーニングを通してアンブシュアを持続する力を少しずつつけてきているその生徒さんは、ご自分のレベルを過小評価していました。

楽器の技術をアップさせるためには、特にアンブシュア維持という一定以上の筋力が必要な箇所に関しては楽すぎる方向に進んでもあまり良いことはありません。今の自分のレベルよりもほんの少しだけ上を目指してみる。そして継続していくことにより結果的に少しずつ演奏技術、アンブシュアの維持する力が上がってきて、求めるリードも変化、成長していきます。
今回はかなり長いお話になってしまいましたが、同じような疑問をお持ちの方も多いと思い、記事にしてみました。皆さんの快適なオーボエライフに何か役立つようであれば幸いです。今日も最後まで読んでくださってありがとうございました。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★