前回に続いて、私がドイツの音楽留学から音楽家としての活動をしてきた中でいろいろな方に頂いた心に残っている言葉をお伝えしていこうと思います。
「心の中をセーブしていると」に続く言葉は「指も息も機能しなくなる」です。どういう意味でしょうか。
オーボエ奏者に限らず、管楽器奏者、そして演奏家は「その曲に対して自分の伝えたいこと、ことば、思いを楽器を通して表現」しています。自分なりの解釈はなにも理論的なことだけではありません。こんな風に感じている、こんな色なような気がする、ここはたっぷりと豊にあらわしたい、、、「楽器を通して聴こえてくる音楽は演奏している人の思い、ことば」です。
少しだけ話が脱線しますが、緊張していると具体的にどの部分に影響が出てきて結果的に演奏に支障が出てくるのでしょうか?
今まで何回か書いてきた「3つの支え」の部分、「足裏感覚」「お腹周りの支え、張り」そして「アンブシュア」です。ここから指の震えになる人もいれば足の震えにつながる人もいます。3つの支えの部分は、体の中の物理的な要素であってそこが支えられていないと少しずつ崩れていき、結果的に演奏に支障が出てきます。では、支障が出ているのはどうやってわかるのか?それは「息=音」です。「息が苦しそう」、「息が余っている感じ」、「息が通っていない感じ=音が飛んでいない」このように最後には「息」に現れてきて、聴いている人にも伝わっていきます。この3つの支えは物理的な要素でしたが、心理的な要素もあります。これが今日のテーマです。
私たちが、今目の前にある曲、音楽に対して持っている思い、こう表現したい、こう伝えたい、という強い意思を持っているとそれは「気のエネルギー」となって息に繋がっていき、思いが音に乗って流れていきます。結果的にいきいきとした音になり、その勢いは指までも滑らかに動かしてくれます。逆に心の中に抱く思いをセーブしてしまうと、息に気力がなくなりエネルギーは失われ、息の勢いは止まってしまい、音や響きはつまってしまい指も滑らかに動かなくなります。
このように、勢いのある演奏とは物理的な要素と精神的な要素どちらもうまくかみ合ったときに可能になる、とも言えます。どちらかだけではいけない、とも言えますが、見方を変えると「どちらか一方からでもアプローチすれば心と体がうまくつながる手掛かりになる」と考えることもできます。この考え方は「メンタル曼荼羅」という方法を用いていますが、それについては話始めると長くなるのでまたの機会に。
私たちの心の中の思い、どんな音?どんな色?どんな響き?どう歌いたい?ぜひこの心の中の思いを大事にしてください。そして120%表現したいと思い続けてください。
心の中の思いをしっかりと持ってください、伝えたい思いを具体的に持ってください、そうすると息も指も心の気のエネルギーを受け取っていきいきとした響きになっていきます。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございました。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2020年6月7日)