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【オーボエ奏法】3つの支えの中で一番失われやすいポイントは?

私自身が今その状況なので、今日のお話しのテーマに選びました。仕事が忙しい、合奏が行われない今の状況で楽器を吹く時間が減ってしまった、合奏の曲が主なので自分一人で練習することは少なくなった、、、。このご時世、様々な理由で楽器を吹く機会が減ってきている方も多いと思います。私自身も、今は中学校教員の仕事に慣れるので必死でオーボエの練習は以前ほどできなくなりました。

オーボエをそれなりの年数吹いてきている人は、運指を忘れることはありません。そして練習できなくても指の力が明らかに衰えることは少ないでしょう。お腹周りの支えの感覚についても、普段感覚が掴めていれば急速に支えの感覚を失うことも少ないと思います。

今日のテーマです。

3つの支えの中で、一番失われやすいポイントはアンブシュアです。アンブシュアを支えている筋力です。

誰もが毎日十分な練習時間を確保できるとは限りません。しかし楽器を吹かないと真っ先に失われていくのは「アンブシュアを支えている筋肉の力」です。久しぶりに楽器を吹くと何だか感覚がつかめない、と感じることが多いと思います。この抽象的な「感覚がつかめない」というのは「アンブシュアを支える筋肉の力が失われてきているから感覚がつかめない」のだと思います。リードに接する唇の部分、リードには息を入れる、どんな感じで吹き込んでた?どのぐらいのくわえ方だったか?響かせるポイントは?このような事を解決していく上でまず大事なのは「アンブシュアの良い感覚」だと私は思っています。「アンブシュアの良い感覚」とは「無理のない形でくわえて少ないけれどスピードのある息がだせてオーボエを吹いても音程がぶら下がらないアンブシュア」です。

では、どうやったらその「アンブシュアの良い感覚が失われにくくなるのか」。

日本語では何というのか、うまい言葉がすぐに思いつきませんが、ドイツ語では「piepsen(ピープセン)」と言って「リードだけでピーピー音を鳴らす事」になります。以前の記事でも書いてきた事ですね。リードを指で支えて音を出しても良い、指で支えなければなお効果あり、そして同時に大事なことは「HーCisーDis」の3つの音、キツかったら「HーCis」の高さの音でリードをピーピー鳴らすことです。リードだけ鳴らすトレーニングを数分続けるだけで、アンブシュアを支えている筋肉が疲れてくると思います。けれど、こればかりは私は筋トレと似ている部分があると思いますので(ただし、正しいくわえ方で吹くときと同じ無理のないフォームで)トレーニングすればするほどアンブシュアを支える力はつくと思います。

私が実際にドイツの音楽大学受験のための準備をしていたときに教授にアドバイスされて実践していたことをお話ししたいと思います。シューマンの「3つのロマンス」を三楽章全て通すのがどうにもきついのだが、どうしたら良いか、と聞いたのですが、「ピープセンで全曲を吹いてみてごらん」と言われました。リードだけで音を鳴らして全楽章通して吹いてみてご覧、という意味です。早速リードだけで実際に曲を吹いているようにリードの音程も変えながら吹いてみました。一楽章を通すだけでアンブシュアを支える筋肉が悲鳴をあげていました。さらにあきらめずに全楽章リードだけで音を出してピーピーと吹きました。文章だけで読むと、なんてスパルタな、、、と思うかもしれません。しかし、その後、楽器にリードをつけて一楽章から吹いてみると、音が、響きがガラッと変わっていました。十分にリードを包み込んで支えられていて響きが潰れていない。その後、何度もリードだけで「3つのロマンス」を吹いてみて、全楽章を吹くのがずいぶんと楽になったのでした。

慣れないうちはすぐにアンブシュアが疲れてしまうと思います。こういうトレーニングで支える力を育てるのには時間がかかります。けれど、野球では素振り、サッカーではドリブル、バスケではシュート練習、というのと同じように、オーボエではリードで音を出して「リードを支えるアンブシュアの筋肉の力を鍛える」というのを意図的に行う必要があると思います。そして、練習できない日があったとしたら、せめてリードで音を出す、音を出すのが難しいなら、吹いている時と同じポジションでくわえて息だけを出す、というのでも効果があると思います。よかったら試してみてください。今日はこの辺で。最後まで読んでくださってありがとうございます。

Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2020年6月13日)