(2020年10月31日)
今日お話しすることは、オーボエリードの振動(クロー)についてです。基本的に私のオーボエリードはクローを大切にしています。作り方の違いによっては今日のお話は参考にされるべきではない方もいらっしゃるかもしれません。振動(クロー)が大切だと思っている方だけ読んでいただけたら、と思います。

なぜこのような前置きを書いたのか、それには理由があります。私自身、クローがあまり鳴らないものからクローを重視する方へと作り方を移行したからです。そして、移行した結果、クローを重視するオーボエリードの方が演奏の可能性を広げることができると実感しました。
振動(クロー)を重視しているといっても、具体的にはどのようなクローが良いのでしょうか。それは「高い振動から低い振動まで、満遍なく」です。さらに具体的に書きますと「①スムーズにクローが始まり」「②低い、振幅の大きいクローだけでなく」「③キンキンとしていたり、ギャーーと鳴らない滑らかなクローで」という感じです。どうしてここまで具体的なクローが必要なのか。わかりやすく逆説的に書いてみましょう。

①なぜスムーズにクローが始まらないとダメなのか?→ これは演奏をスタートさせる時に発音に大いに関係してきます。クローがスムーズに始まる、振動がスムーズに始まる、ということはすなわちスムーズに発音ができるということです。
②なぜ低いクロー、振幅が大きいクローだけだとダメなのか?→ これはまだリードが厚すぎる可能性があります。思い切り息を吹き込まないと鳴らない、いわゆる「重すぎる」リードである可能性があります。一見、暗くて丸い音に聴こえるかもしれませんが、細かいニュアンスは表現しにくくなり、自由な演奏からは離れていく可能性があります。
③なぜ高いクロー、キンキンしたクローだけだとダメなのか?→ これはリードが硬すぎる、柔軟性が足りない、そしてそもそも振動しきっていない可能性があります。この状態のリードは息が十分に入りにくく、吹けば吹くほど苦しくなっていく傾向があります。
では、それぞれの状態のクローをどうやったら満遍なく振動するクローにできるのでしょうか。具体的にリードの何処に手を入れたら良いか、私なりのやり方をご説明しましょう。

①スムーズにクローを始めるためには→ 先端の部分を完成させることがまず第一です。そして先端部分が完成したら次に分厚くなる部分、リードを横から見たら山型に盛り上がっていく部分を少し薄くしてあげたら良いでしょう。
②クローが低い音だけ、振幅が大きすぎる時は→ 厚すぎるリードの可能性がありますので、基本的には全体を薄くしてあげると良いでしょう。ただし、真ん中の背骨の部分、ハートの部分は薄くしすぎないように注意してください。
③クローがキンキンしすぎる時、ギャーーっとなりがちな時→ リード全体が振動しきれていない可能性があります。スクレープが短すぎませんか?ほんの少しずつスクレープを延長してあげてみてください。他に注目するポイントとしては、中央部分の厚さに対して(バランスという意味で)サイドが厚すぎませんか?ということです。背骨が比較的薄めなのに対して、両腕にあたるサイドの部分が厚すぎると、リード全体が振動したいのに両サイドの厚さにがんじがらめになって柔軟に振動できていない可能性があります。バランスよくと言うわけですね。
まんべんなく振動(クロー)することを目指すとそれに対応できる息のスピードが必要になります。さらにその適度な振動とスピードのある息をしっかりと支えるアンブシュアも必要になります。一つのことを少し変えるだけで、他の支えの部分も連鎖して結果的に「しっかりと、健康的な」吹き方になっていくと思います。参考になれば幸いです。
今日はこの辺で。最後まで読んでくださってありがとうございます。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★
(2020年10月31日)