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【リード】焼きと割れとその前に大事なこと②

前回の記事では「なんのために焼きを入れるのか」というテーマについてお話ししました。「チューブとケーンを自然な形でセッティングするため」であり「自然なフォームを作るためにケーンの先端部分とチューブの重なる部分を熱してマンドレルに差し込んでワイヤーで閉じていくことによって、できるだけマンドレル(チューブ)のフォームに近づけていく」ということまでお伝えしたと思います。今日は次の段階、「どうやっているのか」その方法をたくさんの写真を使ってお話ししようと思います。

本題に入る前に一つだけ大事なことを。「そもそも割れるのはどうなの?」ということについてですが、私の考え方は「①ヒビが入る程度なら適度な張りがあるということで良しとする、②ヒビが上の方まで進行してスクレープまで届いてしまうと良くない、③ヒビが入らないものはむしろ少し柔らかめである」ということです。①に関しては、私はむしろこれを良い材料の判断基準にしています。②に関しては硬すぎて割れが進行するので柔軟性に欠ける材料ということになりいくら削っても硬いままでしょう。③に関しては柔らかめの材料であるということでそれに対応した仕上げ方にします(出来上がるのは軽め〜子ども用リードになることが多い)。これが私の材料の硬さ/柔らかさに対する判断基準と対応の仕方です。本題に入ります。

①ケーンの先端を薄くして左右をずれないようにぴったり合わせてワイヤーで固定する

『1枚目」ケーンの先を3〜4mm薄くします。このとき先端に向かって徐々に薄くすると良いでしょう。

『2枚目』二つ折りにしたケーン、左右良く見ながらぴったりと重ね合わせます。このときいろいろな角度から見て真っ直ぐ重なっているかチェックします。大変重要なポイントです。

『3枚目』イングリッシュ・ホルンのマンドレルの根元で作った真鍮ワイヤーの輪っか(2重)です。これを重ね合わせたケーンにはめ込みます。ワイヤーの位置は大体真ん中あたりです。

『4枚目』私が使っているワイヤーの種類と用途です。左側が焼きを入れる際に使うワイヤーで太さは0、38mmです。右側は完成リード用に使うワイヤーで太さは0、28mmです。焼きを入れるときにワイヤーが細すぎると材料に食い込んでしまうこと、力が集中してかかりすぎることなどから太めのワイヤーでまんべんなく力がかかるようにしています。完成リードの場合はワイヤーが太すぎると大雑把な力のかかり方になるので細めの物を使い繊細な力の加え方が出来るようにしています。

②マンドレルの先端をロウソクで熱してケーンをはめ込む。

ロウソクでマンドレルの先端を熱するときは炎がマンドレルに直接触れないようにします(すすがついてしまい不純物となってリードにとっても良くないと思います)。およそ20〜26秒かざすと指先に熱を感じます。そこでやめます。大事なのは熱しすぎないことです。ここで熱しすぎると割れがひどくなる原因にもなります。

③ワイヤーを下から3段階に分けて上げていきワイヤーをしめていく、同時にマンドレルも3段階に分けてケーンから抜いていく

次の図を見てください。要点をまとめたものです。

ケーンを熱したマンドレルにセッティングしてワイヤーでしめていく理由は、ケーンをチューブと同じ自然な丸みのある形にし、自然な形でチューブに設置するためです。ですので3段階に分けてワイヤーを下から少しずつ上げていきます(その都度ワイヤーをしめていく)。そして同時にマンドレルをケーンから外していくように移動させます。こうしてケーンの先端は綺麗な丸みを帯びます。写真で詳しく説明しましょう。

1枚目の写真にあるようにマンドレルはケーンの真ん中よりやや上に設置します。ワイヤーは真ん中より下になります。これがスタート地点です。続いてマンドレルはそのままでワイヤーだけを下にずらします。左右の開きが均等であること(マンドレルがケーンの中央にあるか)、ケーンがずれていないことを確認してワイヤーをしめます。このときワイヤーは一度手前に直角に引いて一回まわすだけです。2段階目にいきます。

ワイヤーをさらに少し上に上げます。同時にマンドレルは少しケーンから外していきます。左右が同じ開きであることを確認してワイヤーをしめます。ここでもワイヤーを手前に直角に引いて一回まわすだけです。少しケーンの両端が閉じてきました。さらに3段階目にいきます。

ほんの少しだけワイヤーを上に押し上げます。マンドレルもほんの少しだけケーンから引き抜きます。そして上の写真たちと同様に左右の開きが均等であるのを確認してワイヤーをしめます。このときもワイヤーは手前に直角に引いて一回まわすだけです。ケーンがずれていないかも常にチェックします。ほとんど完成です。

光にかざすと良く見えますが、左は設置した最初の形、右は徐々にワイヤーをしめていきケーンが丸みをもってきた状態です。マンドレルが最初の位置より下に外されているのがわかります。そして最終段階です。

ワイヤーを最後にもう一回しめます。左右ともきっちりと同じように閉じています。3段階に分けてケーンがチューブと重なる部分に丸みを持たせてきました。ケーンをマンドレルから外すとこのような形になっています。

この綺麗な丸みがあると、図の上側に示したようにチューブとケーンのつなぎ目が自然なふくらみを持つことができて、振動も良くするようになり、息の通りもスムーズになります。この丸みをもっていないと、図の下側のようにぺたんこになってしまい、振動しにくい、閉じてしまいやすいなどの問題が起きてくるのです。これをチューブに設置してこの段階は完成です。

もうケーンの丸い形は完成しているので、チューブに設置するときは簡単です。チューブの楕円形とずれないように設置することだけ注意して、あとは決めている長さ(全長)にセッティングして完了です。ちなみに、この写真で使っているチューブは46mmで、シェーパーは「ミヒェル・72」です。私が設定している全長(巻き上げ)は74mm、仕上げは71mmです。この全長と仕上げの長さに関しては、前回の記事でお話ししたように、シェーパーとチューブの組み合わせによって変わってくると思います。大事なのは【ケーンのカーブが自然に閉じていってチューブに繋がるポイント】を見つけるということです。

今回は写真が大量になってしまいました。画像と文章だけではわかりにくいかもしれませんが、この作業は私はとても大事だと思っています。ケーンに丸みを持たせること、同時にケーンがずれないように気をつけること、この作業を徹底的に細かく注意して作業していくと、リードが上手く機能する上で重要な部分(振動が良くすること、ずれないこと)をほぼクリアーできると私は思っています。今日はこの辺で、最後まで読んでくださってありがとうございました&大変お疲れ様でした!

Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2020年5月10日)