脱力は大事。力の上手く抜けた演奏は良い。それはわかります。
しかし、力が抜けている演奏(パフォーマンス)というのは全身の力が抜けていることとは全く意味が違います。力を込めるべきところを集中的に力を込めて、それ以外のところをうまく脱力できている。これが正しい解釈です。今回はこのテーマとアンブシュアについてです。

例えば、新体操の美しい演技。これは全身がガチガチに力んでいてはもちろん無理ですが全身が脱力していてもあの柔軟で伸びやかな演技はできませんよね。優雅で軽やかなバレエは全身が力んでいたらもちろん軽やかな踊りは無理ですが、だからといって全身脱力していたらそもそも足も上がりませんしクルクルと回転することもできません。全身が脱力しているということは、例えるならばサウナに行って体をゆでダコのように温めてその後マッサージチェアで眠るとして、目が覚めて起き上がった瞬間の状態と言えるでしょう。この状態でピークパフォーマンスができるでしょうか?到底無理な話です。

このように「パフォーマンスを行うときに力が抜けている状態というのは全身の力がすっかり抜けていることではなく必要なところはしっかりと力を込めて(上手く使って)、それ以外の箇所は脱力すること」が大前提となるのです。そのためには局所的な筋力トレーニングは欠かせません。その一つがリードをくわえるアンブシュアの形を保つことです。
「力を抜いて演奏、脱力して演奏、パワーは必要ない」確かに正しいことなのですが、これは必要な箇所に局所的に正しく力を込めて上手く筋肉を使っているからこそ「無駄な」「無意味な」箇所に力を込める込める必要がなく実際に脱力もできているということです。ここのところを間違えて解釈するとどうなるでしょうか。

アンブシュアを支える力が足りないのでリードをうまく支えられない→ 口の周りの筋力でリードを支えられないから噛んでしまう→ 潰れた「ベー」という音になる。
アンブシュアを支える力が足りないので軽いリードばかり必要になる→ 開きがあるとアンブシュアを支えられないのでほぼぺたんこのリードを選んで吹く→ 息がそもそも入りにくいリードなのに、息がほぼ入らない状態で無理に吹き込もうとする→ 不必要な空気がどんどん体に溜まっていく→ 苦しくなる→負の連鎖です、、、。
これ以上書いていたら私自身も苦しくなりますのでこの辺にしておきましょう。では、この負の連鎖に陥らないためには何が必要なのでしょうか?

★①ピープセンでの適度な音程が出せること、そしてその音を長く続けることができる。
★②ピープセンで適度な音量が出せること(蚊の鳴くような音では蚊の鳴くような音しか出ない)。(※演奏スタイル・タイプによってはピープセンが適さない人もいます)
この二つのポイントについての説明は少し長くなりますので、詳しくは次回の記事でお話ししましょう。まずは「力を抜けた(ように見える)、そんな演奏(パフォーマンス)ができるということは、まず必要なところに力を込めることができてそれ以外の箇所は上手く脱力できている」というお話しでした。
今日はこの辺で。最後まで読んでくださってありがとうございます。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★