Homeブログオーボエを吹くということ

“良い音“と同時に考えてほしい大切なこと

オーボエの魅力って何でしょうか。『艶があり伸びやか、そして一本の線が真っ直ぐに通って輝いている音』こんな感じでしょうか。私自身もそういう演奏を目指していますし、オーボエの魅力だと思っています。では、ここで皆さんに質問です。最初に書いたオーボエの魅力の中で「音色(リードの影響が多くあります)だけ」を取り出すとどの部分が当てはまるでしょうか。

はじめに結果だけお伝えしますと、私の答えは『艶があり』の部分だけです。『伸びやか、一本の線が真っ直ぐに通っている、輝いている』というのは演奏者自身が可能にする要素です。今回は音色と同じぐらい、いえ、もっと大事なことについてお話ししましょう。

ある日のレッスンでのことです。生徒さんにあるフレーズを吹いてもらい、その直後に自己評価(良かったこととイマイチだったこと)をしてもらいました。生徒さんの回答は「良いところは無かった。高音が綺麗な音で吹けなかった」というものでした。私の評価は違っていました。「高音の音色はあまり気にならなかった。音程もほぼ良かった。ただ、高音へ跳躍する時のレガートが少し途切れて音程がやや不安定だったのが気になった。もう一つ、第一オクターブのE→Cのレガートが引っかかったのが気になった。」というものでした。

聴く人にとっては音程が不安定なこと、そして例えばレガートがスムーズにいかずに音の変わり目が引っかかってしまうこと、音が途切れてしまうことの方が目立って聴こえます。音色がどうのこうのというより前にです。演奏している本人にとっては良い音かどうかが最重要事項に思えるかもしれませんが、聴く人にとっては音程、滑らかなレガート、音の変わり目が綺麗にいく方が大事なのです。これはもちろんある一定以上の音質で奏でられることを前提としていますが、常にこのことを意識していてほしいのです。

もう一度、レッスンでの私の評価に戻ります。「高音へ跳躍する時の滑らかなレガート」は下の音を十分に鳴らしておくこと、そのベースがあって高音の音程を鮮明にイメージして(頭の中で歌って)当てること、アンブシュアを引き締めること、息の圧力を上げること、音の変わり目で特にそれを意識することで可能になります。「第一オクターブのE→Cのレガート」も同じように音の変わり目で特に息の圧力を上げること、息の隙間を作らないこと、指の動きを滑らかに行うことで可能になります。

そして、最初の文章に戻ります。『伸びやかな音』は奏者であるあなた自身が、どれだけ自然な息の吹き込み方で話すように歌うように吹けるかで可能になります。『一本の線が真っ直ぐに通った』音にするためには、いかに息を凝縮してそのラインを集中させるか、その上で体の中から息が真っ直ぐに伸びてリードを通り楽器に響いていくというイメージを持つことで可能になります。『輝いている』音というのは少し抽象的ですが、(私の場合は)ビブラートを使ってオペラ歌手が歌うようなイメージで表現すると可能になります。(※読むだけではなかなか実行できないと思います。詳しく知りたい方はレッスンにお越しください※)

何がいいたいのか。

ある程度の音色が出せるマテリアル、オーボエリードがあったとしたら、そこから先は奏者であるあなた自身の息の使い方、アンブシュアの使い方、滑らかなレガートの達成、これらの具体的要素が結果的に自由でのびのびとしたあなたらしい演奏=あなたの音=良い音につながるということです。そして全てにつながる基本はやはり「ピープセン」なのです。リードに吹き込む息、吹き込み方、発音の仕方、音の絞り方がそのままオーボエの音として反映されるからです。

このような指摘をしたら生徒さんの演奏はガラリと変化して「伸びやかな、音程も綺麗にはまって、音の変わり目もとてもスムーズな演奏」になりました。文章だけではなかなか伝わりにくいと思いますが、音色と同じぐらいに大事なことについてのお話でした。最後まで読んでくださってありがとうございます。

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