昨日、久しぶりに演奏会がありました。といっても普通の演奏会、コンサートホールで行う演奏会ではなく、美術館の中、しかも中庭というオープンエアの場での演奏会でした。この企画は
ミュージアムコンサート Drawing Melodies 響きあう表現
というテーマを掲げて8月毎週金曜日の午後に岡山県立美術館で行われる催し物です。私は昨日の第一回目に参加しました。美術と音楽、これらを分けて鑑賞するのではなく同じ空間で作品に触れながら音楽を肌で感じて欲しい、美術に色々なジャンルがあるように音楽にも様々なジャンルがある、そのときその場所に来ていただいた方々に感じていただきたい。ただ観る、ただ聴くだけではなくそこから色々なことを感じていただき皆さんの生活に少しだけ「芸術という色」を広げていってもらえたら。。。そういう思いで取り組んでいる企画だと私は思っています。
素晴らしいメンバーと素敵な場所を提供してくださった美術館の皆様のおかげで無事に第一回を終えることができました。本来ならば展示室に飾られている「草間喆雄」先生の作品の前で演奏するのですが、このような時期で出演者数も多いことから、私たちの回はオープンエアの中庭で開催しました。
当日はなかなか気温も高く、みな暑い思いをしながらの演奏となりましたが、この中庭の響きは本当に素晴らしかったです。高い壁に囲まれ事実上の吹き抜け、足下と壁は御影石、一方の壁は有田焼で竹藪をイメージして作られている。もう一方の壁は一面のガラス張りで道路を挟んで向こう側の建物まで見える。これは美術館の中庭にいても、ずっと向こうが見渡せて広い空間感覚を持って欲しいという思いでデザインされたもののようです。こんな「おもしろい」場所でパフォーマンスできて、私は本当にワクワクしました。お客様も普段とは違う空間で聴く音楽、その響きや、同時に聞こえてくる蝉の鳴き声、竹の笹がさらさら揺れる感じ、そんな自然の音にも耳を傾けて色々な思いで聴いてくれていました。
もともとドイツから帰ってきてすぐだったので、演奏会の予定などはさほどありませんでしたが、それでも本当に久しぶりに皆さんの前で演奏できて聴いていただいて喜んでいただいて、嬉しさ100倍の素敵な日でした。そして私は思いました。
本当にやりたいことを、やりたい人たちと、やりたい場所で、そしてお客様とその空間と時間を共有したい。
これが私が思った正直な「音楽に対する思い」でした。今はまだそれが実現しにくい状況です。いったいいつまでこの不自由な状態が続くのか、そしてこの先、以前のような状態に戻ることはもしかしたら無いかもしれない。。。けれどだからこそ私は本当にやりたいことを考えて大好きな仲間たちと「うわ、ここ、おもしろい」という場所、空間で表現していきたい。そう思いました。ドイツで本当に色々と経験してきて、そのさきの自分が思った「音楽に対する私の思い」がこれでした。私は常々、音楽は音楽、クラシックはクラシック、美術は美術、といった「分けられた」感覚に疑問を持っていました。そこにおもしろい空間、場所があって何かおもしろいことを表現できるって楽しそうじゃない?私の分野はクラシックなので、そのレパートリーを保ちつつ、そこから広がる「アートな感じ」や「芸術に対する思い」を伝えたい。そのことによって色々な方に音楽と美術の壁を越えて総合的な「芸術」として関心を持っていただきたい。芸術の分野はもっと共鳴し合うべきだ。幸運なことに自分の身近な人たちで同じような思いを持っている人たちがいてくれます。クラシックに限らずです。
まだ自分の中でも思いはまとまりきっていませんしこの美術館のプロジェクトも始まったばかりです。けれど、そもそも思いというものに完成形は無いとも言える。これからなにかワクワクすることが出来そうな、そんな予感がします。
この半年ほど、オーケストラの活動、合唱の活動、吹奏楽の活動、様々な芸術活動が制限され続けています。もしかしたら新しい生活スタイルに慣れていく中で「音楽はそれほど必要ない」と思われる方もいると思います。人それぞれ考え方や大事にしたいことは様々です。けれど、私が昨日感じたように、久しぶりにお客様と一緒に空間と時間を共有できた喜びを実感して「やはりこれが自分にとって大事だ」と思われる方も多いと思います。演奏者側、お客様側に関わらずです。そう思われたのなら、そう感じられたのなら、ぜひその思いを大切にしてください。音楽はこれからずっとあなたの心に寄り添ってくれます。私はそう思います。取り止めのない文章になってしまいましたが、この困難な時に私が音楽に対して素直に感じた思いをお話ししました。最後まで読んでくださってありがとうございます。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2020年8月8日)