Homeブログオーボエを吹くということ

【大事なことば】④気持ち(Gefühl) , 息(Luft) , 表現する(ausdrucken)

今日のお話は、私がデトモルト音楽時代に尊敬していた先輩に言われたことです。当時日記に書いていた内容をできるだけそのまま書いてみます。

F. Krommer (クロンマー)作曲のオーボエ 協奏曲を練習していた時、速いパッセージでつまずいていました。そして先輩に言われました。(ここからその時の会話の内容になります)

『なぜ私はオーボエを吹いているのか?どうしてオーボエを手にしているのか?それは、、、私はオーボエが好きだから、うまく吹けたら幸せだから。そして時にはそれによって聴いてくれる人々も幸せになってくれたら嬉しいから。

そう。まずもって私の「思い」を相手に伝えなければ。メロディを歌って「心から心へ」伝えることができたら素晴らしい。

基本はこれ。オーボエはキイがくっついたただの楽器じゃない。「息を使う管楽器」。うたごえで、息で、エネルギーで相手に「思い」を伝えることができる。これを忘れていたらすぐに息は体の奥に引っ込んでしまって、たどたどしい単に指を動かしているだけのマシーンになってしまう。それでも上手く指が動いているならまだマジだけど、私の場合はそれが機能しなくなるのだ。

だから。勢い、エネルギー、訴えるものを常に心に持っていて、それを壁を突き破るように相手の心に投げかける。一番素晴らしいのは、思っていること、感じていることが自由に表現できること、それができるように私たちは追求していってるんだ。そこから先は自分の思いだけを押し付けるような演奏ではいけない、それはただのエゴイストだからね、そこで大事になってくるのが「開放する(loslassen)」そして「自分の音に耳を傾ける(zuhören)」だけれど、今はその前の段階の話だからテーマをもとに戻そう。

曲の中の上手くいかない箇所を歌ってみる。口の中でモゴモゴとためらった歌い方だといくら頑張っても、楽器でそれ以上の表現をしようとしてもできない。それだけ正直な反応になるんだ。心で感じている、それを更に声に出して表現できる、それで初めて表現したいことができる可能性が出てくる。なぜならオーボエは吹奏楽器だから。音←声←心という順番に音楽は構成されていく。演奏する人の中に「思い」がある、そしてそれを声に出して歌えて更に音にして表現できるからこそ音楽なんだ。絵画や詩も同じ芸術だけれど何かを媒体としなければその意図を伝えることはできない。けれど音楽は違う。「音」というなんの隔たりもないもので直接聴く人の心に届けることができる。簡単に壁を突き破って伝えることができる。大事なのは「思い(Gefühl)、息( Luft)、表現すること( ausdrucken)』

その日の話はここまででした。そして日記に続きを書いています。

それでは、どうやってそれらをスムーズに行うのか、これはまた別の問題だ。自分の「思い」「息」「表現」を邪魔するものは何あのか。それは自分で自分を見つめながら探していかなければ。けれどこの三つのことを忘れているとただのマシーンの演奏になってしまう。

まだまだ続きますが今日はこの辺で。最後まで読んでくださってありがとうございます。

Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2020年8月16日)