本番というのは特別なものです。その時一回限りの場で同じ瞬間は二度と訪れません。そういう意味で音楽は「時の芸術」といえるでしょう。
そんな本番という場ですから「身体的、精神的に普段とは違う状態になる」ことがあります。というかそれが普通だと思います。そういった「本番という、いつもとは違う状態がリードにも影響してくる」と考えたことはあるでしょうか。今日のテーマです。

本番などの大事な場では緊張するのが当然です。上手く緊張した上でより良いパフォーマンスを行います。緊張していない状態というのは意識が散漫で(集中できていない)心身ともにふやけた感じで逆に良いパフォーマンスがしにくいです。「あがる」というのは緊張が悪い方向に向かってしまった状態でこれはできるだけ避けたいですね。少しお話が脱線してしまいました。元に戻しましょう。

緊張する場面では身体的に普段とは違った状態が訪れます。その内容は人によって異なります。私の場合は「口の中が渇く」といった普段は起こらない変化が起きます。そしてこの変化はリードの状態に直接影響を及ぼします。具体的に説明しますと「口の中が渇くことによってリードが普段よりも軽く感じられる」というものです。ですから少し軽めのリードを用意して本番を迎えると「少し軽すぎた」と感じてしまい抵抗感が減ってかえって体への負担が増すのです。そのために私は、本番用に準備するリードはほぼ例外なく「少し強め、少し厚め」のものを吹き込んで落ち着かせていき、少しだけ重いがしっかりと吹けるものを本番で吹くようにしています。そして口の中が乾いた状態になった結果、少しだけ軽く感じることにより「割とちょうど良い吹奏感」で演奏することができます。そういった状態にもだいぶ慣れました。バロック音楽のみのプログラムの演奏会でもあまり大差ない、と今回改めて認識しました。
皆さんの場合はどうですか。

本番はリードが少し重くなる、という人もいるでしょう。私のように本番はリードが少しだけ軽くなるという人もいるでしょう。特に何も変わらないという人もいるでしょう。緊張する場面で口の中の状態がどう変化するのか、ということを知っておくことはとても大事なことです。その場面になってリードの変化に驚いてコントロールできなくなった!という事態を防ぐことができるからです。
口の中の状態ではなく、体の他の部分が普段の状態と変わってくるという場合もあると思います。お腹の調子、手の先の感覚、足が震える、、体の中に起こることをコントロールするのはなかなか難しいですが、口の中の状態が変化することを知った上でそのための対策をリードを通して行うということは可能です。

これは余談ですがもう一つ自分の体に起こる「変化」がありました。
緊張して「あがった」状態になってしまうと、私の場合は時々アンブシュアの形を保つ力が失われることがありました。コントロールが効かなくなるのです。どうしてそうなるのか、何が原因なのか、そして何をどうしたら良いのかわかりませんでした。そんな時に迎えた本番はまさにトラウマになりました。
それを救ってくれたのは「ピープセン」でした。私が何度も何度もお伝えしているものです。今日のお話では詳しくは書きませんがまたの機会にお話ししようと思います。
今日は、本番の時に自分の体の状態がどう変化するかを知ることによって、それに関する対策、私の場合はリードで対応できる、というお話でした。最後まで読んでくださってありがとうございます。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★