あいまいでもあるのですが実はとても大事なこと、演奏をする上で欠かせないことの一つが「イメージ」です。今回は「音程」というテーマに絞ってお話しましょう。おそらく多くの人に共通して言えることなのではと思います。

最近あったレッスンでのことです。高音域、第2オクターブAからCの音程が不安定です。音階でアプローチしてもオクターブでアプローチしても不安定なままです。試しにピープセン(リードだけで鳴らすピーピー音)を吹いてもらったらちゃんと機能(ピープセンの音程、音の強さ)します。アンブシュアの形にも無理があるようには見えません。本人にもどうして高音域の音程が不安定になるのか、理由がよくわからない状態です。

そこで私はこう伝えました。「どんな音を出したいのか、とにかく強く強く念じてください」
曖昧すぎる、具体的にどうすれば良いのかわからない、押し付けがましい、ど根性みたいな感じで無理、、。多くの人は思われることでしょう。けれど、これで上手く機能するのです。実際、この一言だけの声かけで「音程もかなり綺麗に当たり、音の強さもある」パフォーマンスができました。
なぜか。ここからが大事になります。皆さんも「自分ごと」として当てはめて考えてみてください。

決して根性だけで上手くいったわけではありません。初めに何気なく書いてある項目が前提として重要になってきます。それは「アンブシュアの形が安定していること、ピープセンの音がきちんと鳴っている(音の高さと、音の強さ)こと」です。
そしてもう一つ大事なことは「ピープセンによって出てくる音がそのままオーボエの音となること、それを知っていること」です。

ピープセンまではちゃんと機能しているのですから、そのまま楽器につけても機能するべきですが、なんといってもリードのみのピープセンと、リードを楽器につけて持った時の感覚や体に返ってくる抵抗感が急に変わるのでピープセンの良い状態を維持できないでいるのです。
では、良い状態を保って思い通りの音程で演奏するには何が必要なのか。イメージです。頭の中で思い描く「この高さの音、こういう鳴り方の音を吹きたい」と強く強くイメージすることです。そのために維持すべきなのが「ピープセンの正しい鳴らし方」です。

オーボエリードの特徴として挙げられるのが「リードのみで吹く音の音程を柔軟に変えることができる」ことです。ピープセンで試すと一目瞭然です。高い音はD♯まで、低い音はB♭(極端に試すとF♯)あたりまで出せます。これをオーボエで吹くとどうなるでしょうか。例えば中音域の「C」の音でアンブシュアの形を変えて色々なポジションで吹いてみる(ピープセンでいうと、色々な音程で吹いてみる)と、同じ「C」なのに半音近く低い「H」から半音近く高い「C♯」の音程まで鳴らすことができます。これだけ自由自在に音程を変えることのできるオーボエだからこそピープセンを安定させる必要があります。とても大切な箇所なのでまとめましょう。

アンブシュアの形、ピープセンの音程の違いでここまで一つの音の中で低い、高いと吹けてしまう→ある意味柔軟すぎる、定まりにくい→自分にとっての正しいピープセンの音程とアンブシュアや、リードをくわえる位置を楽器につけてもそのまま維持、そして鳴らしたい音を強くイメージして再現すれば正しい音程で吹けるということです。
楽器のキイは単なる音の鳴るボタンではありません。だからこそ、「イメージ」が大事になってくるわけです。どんな音程の音を吹きたいのか頭の中でイメージする、歌う。強くイメージすることによってアンブシュアが整い、息の圧力も適度なものになる、カラクリはこんな感じです。

ただし、今回私がお話している内容は「アンブシュアとピープセンが適度に実行できている」ことを前提としています。アンブシュアも安定していない、ピープセンの音も弱すぎるし音程も低い、そういった状態で強くイメージして!と言われてもパワハラにしか聞こえませんね。それだけピープセンが大事だということです。そしてリードをくわえる口の形(アンブシュア)を維持するための口の周りの筋力はどうしても必要になります。ここをすっ飛ばして良い音程、幅のある音量でオーボエを演奏するのは難しいです。

とはいえ、年齢とともにどうしても筋力は衰えてきます。私は何も強いリードをいつも頑張って吹いてくださいと言っているのではありません。その時の演奏者の年齢と体力、基本的な演奏技術に吹奏感を合わせたリードでピープセンとアンブシュアを安定させていきましょう、ということです。
今回はついつい文章にも熱がこもってしまいました。何度も何度もお伝えしている内容ではあるのですが、少し違う観点で書き始めるといくらでもお伝えしたいことが出てくるのです。今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。
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