Homeブログオーボエを吹くということ

息、吸う息、見つめる息、沈める息、羽ばたく息 ③

今日は最後の「沈める息」「羽ばたく息」についてお話しようと思います。

みなさんは、ステージに上がる直前、何か意識して実践していることはありますか?以前テレビで見たことがあるのですが、かの大指揮者小澤征爾さんはステージに上がる前に木の板を3回「トントントン」と叩いてから舞台に上がるそうですね。それはもう長年続けてきたルーティンで、どんなステージでも木の板を叩いてから行かれるそうです。
私は管楽器奏者ですので、やはりここは「息」に関することをルーティンとしています。
「舞台に踏み出す第一歩を、深く吸った息を静かに全て吐き切りながら」ということです。あらかじめ深く吸っておいた息、そして第一歩を息を吐きながら踏み出し、そしてゆっくり吐き続けながら歩みを進めます。そしてこれもいつもしているのですが客席を静かに見つめつつ進んでいきます。この「息を静かに吐きながら舞台に進む」というアクションは自分にとってとても大切な儀式となっていて、ここでもう一度ゆったりと落ち着いた気持ちになって、集中力を高めていくことができます。
以前、大学で学んでいた時ですが、前期後期の試験があるごとに先生方の採点と批評が全て公表されていました。その中に「プレゼンテーション」の点数をニコちゃんマークで表している教授がいらっしゃいました。試験とはいえどお客さんに聴いてもらうステージ、そこに登場するしかた、自信なさげにうつむいて出るのか、いそいそと出るのか、強張った表情か、ニコニコしながらか、、、。各学生の表情を細かに書き表しているニコちゃんマークが今でも鮮明に思い出されます。
私たちは、舞台に上がった時から「パフォーマンスをする演奏家」です。その5秒前までお腹が痛かったとか、機嫌が悪かったとか、悲しかったとか、お客さんには関係ありません。舞台上では「音楽の表現者」に私たちは徹することが大事なのです。
落ち着いたこころ持ちで、ほんのり笑顔を浮かべて客席を少し眺めながら登場していく。そこに私なりの「呼吸」のルーティンがあるわけです。

そして最後の「羽ばたく息」です。これは文字通り、鳥が大空を羽ばたくように、私たちの息も意思を伴って羽ばたいていくのです。足と床はまるで大地とつながっている大樹のようでそこから湧き上がってくる息はオーボエを通ってベルまで響き、そのさきも羽ばたいていきます。ここには不自然な力みや詰まった感じの息は感じられません。自分のソロの前になるともう一度自分の呼吸に集中してゆっくり吸って深く吐き切ります。そして
さあ、たのしい音楽の時間です★
今日はこのへんで。ありがとうございました。Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★