オーボエに限らず、管楽器を演奏される方は次のようなアドバイスやコメントを聞いたことがあると思います。
「歌うように」
皆さんは、どういうことをイメージされますか?そして具体的にはどうしたら良いと思われますか?この「歌うように」という表現方法はなかなかに抽象的だと思います。具体的には?何をどうしたら良いの?今回はこのことについてお話ししようと思います。
音楽的な解釈として、相手によりよく自分の想いが伝わるように「どのように歌いたいのか」「あなたはこの部分をどのように歌っていますか」という言い方をよく聞くと思います。今日のテーマは表現的なことではなく、具体的な、物質的なお話しです。
同じ息を使う分野として、そして楽器という媒体が無いぶん、声楽という分野はダイレクトに息の使い方が演奏に現れてきます。そして声楽という分野にはなんと言っても「ことば」があることが1番の特徴だと思います。管楽器奏者である私は、素晴らしい声楽家の方の演奏を参考にしています。キラキラと輝く太陽のような歌声、という意味で「パバロッティ」、高音域で軽やかに、特にモーツァルトなどが素晴らしい「エディタ・グルベローヴァ」が私が真似をしたいなあと参考にしている歌手です。全身を使って華やかな、輝かしい歌声を空間一杯に響かせる、この超有名な大歌手たちの歌声を私はオーボエを響かせるときのイメージ、参考にしています。
声楽家の歌い方を参考にしていることをお話ししました。次に具体的にどういうところに着目して参考にしているのかお話しします。
響かせるということー 響きがぴったりとハマった時というのは体全体、特に頭蓋骨がビリビリと振動しているような感覚があります。これは声楽の方が自分の声を響かせるときに注目する場所でもあります。
支えということー 呼吸、息を吸うこと、そしてどっしりとした構えとたたずまい、私は声楽の方の特に息の使い方、舞台の上に立っているときの姿、それに呼応する支え方に注目しています。
息と、音と音のつながりー レガート(複数の音たちを滑らかにつなげて演奏すること)がうまくいかない時、その理由の大きな部分として「音と音の間の息のスピード、圧力が足りない」ことが挙げられます。まるで一本の美しいラインがあってそこにキラキラひかる真珠の粒のような音たちが繋がっている、息はその真珠たちを美しくつなげるもの、と思っています。スピードがあって密度の高い息こそが美しい、滑らかなレガートを可能にするのです。息の勢いという意味では、「どのように歌うのか」という視点で声楽かの方の演奏を見るととても参考になると思います。
最初でもお話ししたように、声楽の分野は「ことば」があります。「ことば」はそのまま、奏者の思いとして伝わっていき、お客様に聴いていただくことになります。私たち管楽器奏者は「ことば」に代わり、音や表現、強弱のアイテムを用いて「楽器を通して」自分の「ことば」として表現しなければいけません。ということは、歌を歌うこと以上に「音にことば、思いを込める」必要があります。ぜひ、声楽家の方々の演奏を聴いて、見てみてください。いろいろな発見があると思います。
今日はこの辺で。最後まで読んでくださってありがとうございます。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2020年6月22日)