私がオーボエリードを完成していく中で、どんな点に気をつけて、こんな場合はどのように対処したら上手くいきましたよ、とお伝えしていくシリーズです。今日のテーマは
低音が出にくいのだけれど、どうしたら良いのだろう
ということについてです。オーケストラで2番オーボエを担当する時など、特に「低音のPやPPが出しにくい」「かすってしまうか、爆音が出てしまうか」と悪戦苦闘した経験のある方は少なくないと思います。私も全く同じでした。小さい音を出そうとするあまり怖がってしまい音が「ぷすっ」とかすれてしまう、そうかと思いきや少し力を込めると今度は「バァン」と強い音が出てしまう。なんとも低音のPやPPのスタートって扱いにくい音域ですよね。そのことについて、奏法の視点からアプローチするのはまた別の機会でお話しするとして、今日はリードのどの部分をどう修正したら低音のPやPPが吹きやすくなるのかお話ししましょう。
大きく3つのポイントがあるのですが、どうすれば良い、とだけお伝えする前になぜそのポイントなのかを説明しながらお話を進めていきましょう。
① 発音のしやすさは大前提
前回の【リード・ワンポイント】②でもお話ししたように、全てにおいてスムーズな発音は大前提となります。綺麗にスタートが切れないと始めることができませんから。スムーズな発音についてはその記事をご覧ください。
② スクレープの下の部分を少し薄くする、またはスクレープ自体を少し長くする
低音が鳴らしにくい、発音しにくい原因として考えられるのはリード自体が十分に振動していない可能性があるからです。リードだけで音を鳴らしてみるとよくわかると思います。リードを普段演奏するときに加える位置よりもっと深めにくわえて息を吹き込むと「ギャー」という音が出ます。これを「クロー」といいます。低音域が出にくい場合、クローの音が高音になりがちで、窮屈な感じの「キャー」という響きになることが多くなります。リード全体が十分に振動し切れていないために甲高いクローの鳴り方になるのです。私が良いと思っているクローの鳴り方は「高音から低音までまんべんなく鳴り、振幅も細かすぎず大きすぎず中庸、スムーズに程よい抵抗感のあるもの」です。そのことによって低音域も安心して鳴らすことができます。そのためには次の1枚目の写真に示した箇所「スクレープの下の部分」を少しだけ削ってあげれば良いでしょう。そしてクローがまだ甲高い窮屈な鳴り方をするときは2枚目の写真のように「スクレープ」をほんの少し長くしてあげるとリード全体がより程よく振動するようになりクローの響きも落ち着くでしょう。結果、低音域が出しやすくなります。ただし、一気にスクレープを長くしすぎるのは危険です、かえって音程が不安定になりかねません。最初はリードナイフで「ほんの髪の毛一本分ぐらい長くする」気持ちで修正してください。足りなければもう一度同じ作業をすれば良いでしょう。リードの修正というのはほんの少し手を加えるだけで大きく変化するものです。仕上げの時と同じように、もしくはもっと注意して手を加えていってあげると、どのように変化したのかもわかるようになります。
③ 適度な開きがあるか
オーボエをある程度の期間吹いてこられた方はお分かりだと思いますが、低音域のPやPPを吹くときは、中音域の時と比べて「息のスピード」「アンブシュアの圧力」が高まります。そうしないと、暴発してしまいアンコントロールな音が出るからです。アンブシュアにある程度の圧力を加えたときに、ぺちゃんこになってしまうリードでは音は出ませんね。ある程度の圧力でも閉じてしまわない適度な開きがあることも重要になってきます。文章に書くと当たり前のように見えるのですが、意外と見落としがちな大切なポイントです。リードに適度な開きがないと演奏の幅が極端に限られてきます。強弱の幅、PPが出せない、かといって息をしっかり吹き込むこともできないので ffも出せない、中庸に限られた演奏になってしまいます。強弱の幅を広げて表現の可能性を多く持つことは自分の演奏をより自由に快適にする上でとても大事なことです。そのための適度な開き、そしてそれを支えるアンブシュアの筋力も大事になってくるのですね。
より快適な、自由な、健康的な演奏のためにできること、リードの視点からお話している【リード・ワンポイント】シリーズ。まだまだあります。どうぞお楽しみに。最後まで読んでくださってありがとうございます。
Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2020年7月25日)